信州大学農学部
応用真菌・きのこ学研究室
研究内容
研究領域 -菌根菌とは-
かびやきのこを含む菌類(真菌類)は、多様な生活様式を持っています。このうち、担子菌類や子のう菌類には、樹木植物根との相利共生体である菌根(外生菌根)を形成する菌根菌(外生菌根菌)が、およそ1万種含まれます。これら菌根菌の多くは”きのこ”を形成するため、”菌根性きのこ”と呼ばれることがあります。中でもマツタケは多くの人に良く知られています。菌根共生は、植物個体の成長促進や生態系における炭素循環、あるいは植物と菌類の共進化などの観点から、植物科学や農林学の分野で広く研究対象とされています。また、マツタケやトリュフの栽培化の観点から、きのこ学分野でも重要な研究対象となっています。しかし、まだまだ未知の要素が多い研究領域です。本研究室では、この菌根菌・菌根共生を研究対象としています。
(1)菌根菌の生理生態に関する研究
マツタケ、トリュフ、ポルチーニなどの食用きのこ類を含む菌根菌は、共生微生物のため単独培養が難しく未だきのこの人工栽培には成功していません。当研究室では、菌根合成法を用いて、菌根菌の栽培法確立の基礎にあたる生理生態的特性の解明を進めています。

(2)菌根の微細構造に関する研究
菌根は、根粒と同様に多くの陸上植物に必須の共生現象ですが、その構造と機能の関係が十分解明されていません。さらに日本では、産業上重要な多くの植物についても、菌根の微細構造が殆ど明らかにされていません。当研究室で、顕微鏡観察により各種植物の菌根微細構造を明らかにするとともに菌種のDNA同定を行い、菌根の微細構造と機能ならびに菌根菌の分類学的位置に関する考察を進めています。

(3)共生真菌類の検出と培養系の確立に関する研究
菌根菌や地衣菌をはじめとする共生真菌類は、土壌中からの検出や共生体からの分離培養が困難で、生態系における現存量や種多様性についても多くが未解明です。このため、これら共生菌の培養法研究の進展により、基礎生物学ならびに産業利用の面から、多くの発見が期待されています。当研究室では、広く生態系に存在する多様な共生菌を検出し単離・培養するための方法論を検討しています。
